2003年から2005年にかけて建設された幾何楽堂のオーナー・小坂憲正はおそらく日本でただ一人の「扉作家」である。
彼を「扉職人」と紹介するむきもあるが、「職人」というのは施主の意向を忠実に再現し、自我が出てはいけないはずだ。
ところが、小坂憲正はニコニコと施主と話し合い、幾何楽堂に招き、自分の考えを述べているうちに「すべて君の好きなように・・・」という結論に導いてしまうという特技を持っている。詐欺師のようだが、出来上がった扉を眺めながら施主が「毎日の扉の開け閉めが楽しくて、楽しくて・・」という言葉を吐くのだから世話はない。多分、その秘密は幾何楽堂という建造物に隠されているように思われてならない。樹齢400年〜600年というシルバーパイン、その中でもラップランド産の極寒の地で育ち、立ち枯れた「ケロ材」を使って作られた幾何楽堂。
なぜ、この丸太小屋を「幾何楽堂」と名付けたか、小坂憲正に尋ねたことがある。その答えは「正方形」にあると小坂は言う。正方形の広がりでこの小屋が成り立っているのだと言う(だから、幾何楽堂なんだと)。もし、あなたがここを訪れ眼を皿のようにして各部を眺めてみれば「なるほど」と思うに違いないのだが、正方形というのは、どちらかといえば90度の角度の集合体という硬いイメージがある。ところがである、あなたが幾何楽堂に一歩足を踏み入れた途端、何とも言えない居心地の良さを感じるに違いない。「『淫靡』な部分もあるんだゼ」と小坂は主張するが、それはそれで、ますますオイラには相応しい場所になる。
とにかく、この空間に身を置くことは「快」なのである。「愉悦」と言ってもいい。
それほどの「建造物」なのである。
その幾何楽堂は約三年の歳月をかけて小坂がほとんど独力で完成させた。そして、昨年(2006年)には「夢の丸太小屋に暮らす」というログハウス専門誌の「優秀賞」を獲得してしまったのだ。

『幾何楽堂』の意味
幾何(学)とは、ものの形や大きさなど、空間に関する学問を意味します。
この建物は、家の形・部屋の形・床・天井・各部デザインに至るまで、すべて正方形の重なりによってできています。
また、メインルームの40畳は柱がひとつもなく、すべては屋根構造(合掌造り)によって、この建物を安定させています。
そして、この建物のメインルームは、ログハウスでは不可能とされる大間口H1800XW5400を、日本建築の構造体により実現させ、家の中にいながら、壮大な自然を見ることができます。
幾何楽堂の中心に位置する顔・玄関の一枚ドア(H2200XW1700)が、異次元への入口を意味し、さらに二つ目の杉の一枚板のドアをくぐることによって、宇宙へと広がります。
そこで、幾何を楽しんでいただければ幸いです。
幾何楽堂
小坂憲正
幾何楽堂ホームページより




その幾何楽堂で5月13日(日)より20日(日)までの8日間、「和傘の個展」である。

建設途中の幾何楽堂
小坂憲正
